私のライフワークである小説群『Avaloncity Stories』(以下、AS)は、大きく分けて三部に分かれる。古代から現代・近未来までの地球の歴史を描く第一部、未来の植民惑星「アヴァロン」が中心のSF第二部、そして、アヴァロンのさらに未来が舞台のファンタジー第三部である。
これらは、タイトルからも分かる通り、鬼才・永野護氏のライフワークである我が最愛の漫画『ファイブスター物語』(以下、FSS)の影響がかなり大きい。第一部の「海の子(娘/息子)」や第二部の人造人間「バール(baal)」、さらに第三部の「魔法戦士」は、明らかにFSSの騎士やファティマがモデルである。もちろん、他に影響を受けた作品は少なくない。荒俣宏氏の『帝都物語』や冲方丁氏の『マルドゥック・スクランブル』などはその一部である。さらに、コーエー三國志の新武将システムの影響もある。
そして、何よりも当作品群の土台になっているのは、『史記』とアーサー王伝説とファウスト伝説である。第二部以降の舞台となる惑星の名前は、アーサー王が眠る妖精の島に由来するし、メインヒーローの名前は「フォースタス」だ。ついでに、メインヒロイン「アスターティ」の名前は、古代フェニキアの女神アスタルテに由来するが、偶然にも詩人ジョージ・ゴードン・バイロンの戯曲『マンフレッド』に同名の女性キャラクターがいる(そして、私がそれを知ったのは、私がアスターティというキャラクターを作ってからである)。それゆえ、第二部以降のアスターティの弟「アスタロス」の「人間としての」名前は「マンフレッド・フォーチュン」という。
フォースタスとアスターティというカップルは、第一部・第二部・第三部それぞれに存在する。第一部のフォースタスは趙の武霊王の息子で、第二部のフォースタスは売れっ子作家、第三部のフォースタスはある国の王族出身の魔法戦士である。そして、第一部のアスターティは魔術師マーリンと「海の娘」の娘で、第二部のアスターティは売れっ子ミュージシャン、第三部のアスターティは空中都市「ヒメルシュタット」で生まれたバールの魔法戦士である。
他にも、名前などがある程度共通する人物は何人かいる。結構ややこしい。
ASのメインヒーローであるフォースタス・チャオ(Faustus Chao、趙翔)は元々私がコーエー三國志で登録した新武将がモデルの一人だが、さらにモデルをたどっていけば、FSSの主人公アマテラス(並びにレディオス・ソープ)と『ああっ女神さまっ』の森里螢一、そして『三国志演義』の趙雲の三人がいる(さらには、アーサー王伝説のマーリンの要素も多少はある)。さらに、第二部の売れっ子作家としてのフォースタスのモデルとして、原田宗典氏と冲方丁氏がいる。
FSSと『女神さまっ』でお分かりのお方もいるだろう。ヒロインのアスターティ・フォーチュン(Astarte Fortune)のモデルはFSSのラキシスと『女神さまっ』のベルダンディーだ。とは言っても、外見ではなく、パートナーとの関係性をモデルにしているのだが、アスターティの名前は前述の通り、古代フェニキアの女神アスタルテに由来する。そんな彼女が売れっ子ミュージシャンになったのは、男性ヒーローとの関係性以外にも当人の「存在意義」を持たせたかったからであり、何よりも当人を「自己表現する女」にしたかったからである。単に「一途に男を愛する女」というだけでは、同性としてつまらないと思うのだ。
アスターティの外見上のモデルはラキシスやベルダンディーではないが、『ガンダム』のセイラ・マスでもない。私が中学時代に描いていたオリジナルキャラクターが元ネタのようだが、その今はなきキャラクターの名前は「紫苑」といった。私のペンネーム(ハンドルネーム)の由来だ。花のシオンの学名は「Aster tataricus」というが、うまい具合に「Astarte」という名前に対応している。このような偶然の連続でASは成り立つ。
AS(主に第一部)では歴史上の有名人たちもキーパーソンになっているが、これは前述の通り『帝都物語』の影響が大きい。『帝都物語』では平将門が物語の「神」として君臨しているが、ASにも当然その「神」はいる。その神の名は今執筆中の小説を完結させてから書く予定の商鞅の話で明かす。私が好きな某小説シリーズの元ネタになった存在だ…というと、ネタバレだね(笑)。とは言え、その「神」の存在はその某小説シリーズを読む前から決まっていたのだが。
【Carl Orff - Camina Burana "O Fortuna"】