世間には「I have black friends(自分には黒人の友達がいる)」などという言い回しがある。これは、レイシストが自分がレイシストであるのを否定するために用いる言い訳だが、私が思うに、彼女は「She has female friends(彼女には女友達がいる)」だ。
そう、彼女はプリンセス。他の女たちなど侍女でしかない。かく言う私も、彼女の侍女だった。
彼女は「男のための女」、だからこそ、常に女である自分自身のための男たちを求めている。そのためには、どんな同性をも足蹴にしてしまう。だけど、彼女は自らの女としてのエゴイズムに対して無自覚なフリをして生きている。「無邪気ないい人」の仮面をかぶり、チヤホヤされたい願望を汗の匂いのように発散する。それでも、彼女は自らの「匂い」に対してカマトトぶっている。
カマトト。そう、彼女は自らの淫乱さをごまかすためにカマトトぶっている。いわゆる「清楚系ビッチ」とはちょっと違う。彼女は一見、その本性ほどには女らしくはない。「私は某イケメン俳優さんに似て男顔なの〜!」などと、自虐の皮をかぶった自慢をする、鼻持ちならない女だ。宝塚の男役スターの劣化コピーみたいな、雰囲気イケメン女子。ふん、ちょっと背が高くて脚が長いからっていい気になりやがって。
もちろん、私は彼女の自分自身への言及が全て真実だとは思えない。
私と彼女は共通の知人の結婚式に参列した。彼女は他の女性客たちから、例の某イケメン俳優に似ているとキャーキャー騒がれていたけど、彼女は本当は、イケメン男優ではなく美人女優のようにチヤホヤされたいのだ。だからこそ、彼女はしたたるような媚びを男たちに振りまくのだ。
彼女の職場はほとんどオジサンたちばかりで、同性の職員は年配の既婚女性が数人いるだけだ。他に若くてかわいい女がいない限りは、彼女は「プリンセス」でいられる。
インターネットの世界でフェミニストを名乗る女性たちは彼女のような女を「名誉男性」呼ばわりするようだが、それは日本語としてあまりにも違和感があり過ぎる。なぜなら、私は彼女ほど「女らしい女」を他に知らないからだ。確かに彼女の体格は良くも悪くも「名誉男性」と呼べるくらい、ガッシリとスポーティーだ。もし私が彼女に対して好意的だったならば、あの女の子たちみたいに彼女をチヤホヤしていたかもしれない。
彼女は職場で唯一独身だった男性社員をカニバサミで捕まえて、できちゃった結婚に成功した。
義務教育時代に男子クラスメイトにいじめられて男嫌いになっていた私が、唯一好感を抱いていた同年代男子を、彼女は汚い手を使って手に入れた。本当に彼女の旦那にさせられたあの人が彼女のお腹の子の父親なのか、怪しい。あの二人の結婚式で仲人を努めた上司の人、多分あの人が怪しい。あのスピーチでの微妙な緊張は、単にハレの場だったからだけではない。何だか匂ってくる。あの時の私は思った。
あの結婚式以来、私は実生活では彼女とは距離を置いている。今の彼女についてはSNSなどを通じて知るだけだが、寿退職した彼女は手料理自慢で良妻賢母アピールをしている。だけど、私にはそれらがことごとく嘘くさく見える。
根っからの男好きの「女友達」自慢。なるほど、今の日本では彼氏自慢や旦那自慢よりも、同性同士の交友関係こそが女のステータスシンボルかもしれない。特に、ネット上の自称フェミニストたちがいい例だけど、これぞまさしく「She has female friends」だ。
【t.A.T.u. - All The Things She Said】