私はヤフー知恵袋で次のような質問をした。
《聖書のイヴの中国語名は「夏娃(xiawa)」というそうですが、この中国語名は単なる当て字でしょうか? それとも、昔の夏王朝のイメージ(それくらい古い時代に例えられるほどの女性像)を込めたものでしょうか? いわゆる「パンゲア大陸」の中国語名は「盤古 大陸」と言いますが、これは単なる当て字だけでなく、中国神話の盤古のイメージも当てはめているそうです。イヴ=「夏娃」という名前の当てはめ方も「盤古大陸」と似たようなものでしょうか?》
それに対して、次のようなご回答があった。
《聖書はもともとヘブライ語で書かれておりヘブライ語だとイヴのことは「hawwah」と呼びます。そして中国語の「夏娃」は元々粵語 や閩南語 で、粵語や閩南語では「夏娃」を「ha wa」と発音します。ヘブライ語の「hawwah」と粵語や閩南語の「ha wa」ならほとんど発音が一緒なので夏娃という当て字が当てられたことも納得できすよね。複雑に言語が混ざった結果分かりにくくなってしまったようです》
つまりは、中国語の共通語(北方系中国語を基本とした普通話 )ではなく、南方系の方言に由来する当て字なのだ。
ここで『広辞苑』の「母」の項目を引いてみる。「母」とは奈良時代には「ファファ」、平安時代には「ファワ」と発音されていたらしい。ある書物では「母」を平仮名で「はわ」と書いていた例があるという。前述のイヴのヘブライ語名や中国語名に似た響きである。確かにイヴとは「人類の母 」である。
さらに、日本語の古語で大蛇を意味する単語として「はは」があるが、これはイヴと楽園の蛇との関係を連想させる。バーバラ・ウォーカーの『神話・伝承事典』(大修館書店)の「Serpent(ヘビ)」の項目には、イヴの名前についてのアラム語での語呂合わせについて書いてある。「万物の母」は「Hawah」、「教示する」は「hawa」、そして「蛇」は日本語の「ヘビ」に似た「hewya」であるが、ウォーカー氏のこの本自体の信憑性が怪しい上に、グーグル翻訳でアラム語が使えないので、確認のしようがない。
聖書の楽園の蛇や、多神教神話で英雄に倒されるドラゴンには「男性的」なイメージがあるが、女性の「龍神」もいる。ファンタジー系のゲームでよく使われるバビロニアの太女神ティアマットがそうだが、彼女は元々「万物の母」である。そのティアマットを倒して世界の王(貞治さんに非ず)になった男神マルドゥーク(冲方丁氏の『マルドゥック』シリーズの元ネタになった神様だが、彼が「男神」である事自体がその所以だろう)は、母神ティアマットを殺害して、死体を解体して「世界を想像した」とされるが、要するに彼は、ゼウスやオーディンやヤハウェらの「大先輩」である。
(ついでに『荘子』の「渾沌に穴を開けたら死んじゃった」話なんて、聖書の天地創造のお話に対する当てこすりみたいだね)
キリスト教が世界の覇権を握ってからは、ヤハウェとキリスト以外の神々はことごとく「悪魔」にされたが、「バール(Baal)」系の神々がいい例だ(例えば、ベルフェゴールもその一人だが、もしかするとベリアルも元々「バール系」の神だったかもしれない)。当然、「ベル(Bel)」という称号を持っていたマルドゥークも例外ではないが、私はむしろ、彼は商鞅に生まれ変わって車裂きにされたという仮定の方が、よほどこの男神の末路にふさわしいと思っている。
【Eve - Gotta Man (Official Video)】
昔、日本に「イヴ」という女性コーラスグループがあったので、そちらの曲を探すつもりだったのだが、たまたまこちらを見つけたのでご紹介。