「好きな人」なんていなかった

「ラブハラスメント」(以下、ラブハラ)という造語がある。これは一種のセクハラだが、様々な種類がある。

 例えば、小中学生がクラスメイトに「○○ちゃんって好きな人いるの?」としつこく質問するのが典型例だが、被害者が「異性のクラスメイトにいじめられてミソジニー/ミサンドリーに陥っている」場合、なおさら苦痛である。もちろん、同性愛者などの性的マイノリティがラブハラの被害に遭う場合もかなりの苦痛のハズだが(なぜなら、たいていのラブハラは強制的異性愛を基準とするものだからだ)、単純に数だけを問題にするならば、「非モテ」で「異性嫌い」「異性不信」の性的弱者の異性愛者が一番多いラブハラ被害者だろう。 

 当然、私も元ラブハラ被害者である。

 私は義務教育時代、男子クラスメイトに「バイキン」呼ばわりされていじめられていた。当然、クラスメイトに「好きな人」なんていない。しかし、意地悪な女子クラスメイトは私にしつこく「好きな人いるの?」と訊いてきた。言うまでもなく、私が男子クラスメイトにいじめられて男嫌いになっているのを分かった上での嫌がらせである。当然、私は「いない!」と答えたが、その女子クラスメイトはさらにしつこく追及する。

 ある日、ある男子クラスメイトが私に嫌がらせをしたが、そいつは「天才」を自称していた。当然、そいつは凡人だが、私は「天才は『無駄な事』は言わない」と反論した。しかし、私は滑舌が悪いので「天才は『村山』しかいない」と聞き間違えられ、たまたま存在した「村山」という苗字の男子クラスメイトが私の「好きな人」だという濡れ衣を着せられてしまった。それで私はしばらく無実の罪で嘲られてしまった。


 はぁ、思い出すだけで苦々しい。当時の私はまだ十代前半だったし、同年代の男子なんて対象外だったんだよ。私の初恋の人は中学校に進学してから担任になった新米の先生だったし、その先生は私が卒業する年になってから婚約を発表して、私は完全に振られたんだよ。

 今の私は一人の成人女性として「ロリコン」の男性を嫌っているが、しかし、自分自身の少女時代を振り返ってみると、自分と同年代の男子なんぞ「対象外」だった(自分がいじめられっ子だった事実を度外視してもだ)。誰かが「男は良い『素材』を求め、女は良い『完成品』を求める」と言っていたが、なるほど、女性の「ショタコン」が男性の「ロリコン」に比べてずっと少ないのはそういう事なのだろう。「おじさん好き」を公言する女性は、あくまでも「人間」としても「男性」としても完成度が高いおじ様たちを好むのであり、決して「無駄に歳を重ねているだけのガキ」なんぞ求めてはいないのだ。


 ユリイカ誌2014年12月号「百合文化の現在」特集で、作家の中里一氏がこう書いている。

《小学生のとき私は、同級生たちから「クラスのなかの誰が好き?」と問われるのが苦手だった。毎日、違う人を好きになったからだ》 

 要するに、中里氏は私とは違ってクラスメイトの質に恵まれていた上に、おそらくはクラスメイトにいじめられていなかったようだ。そういう理由でその質問が苦手だったなんて、何ともうらやましいね。

【松永天馬 - ラブハラスメント(TEMMA MATSUNAGA - LOVE HARASSMENT)】

 芸能事務所タイタンの太田光代社長(旧姓は松永さん)は松永久秀さんの子孫だというが、こちらの松永さんもそうなのだろうか?

 ちなみに私の亡き母の旧姓も織田信長の某家臣と同姓だったが、別にその人の子孫ではない。