青い缶はそこにある

 私は子供の頃、ニベアクリームを使っていた。子供から大人まで使う、みんなのお肌の味方、ニベアクリーム。しかし、成長した私は、いつの間にかニベアを使わなくなっていた。

 あまりにもポピュラー過ぎる。それが、私がニベアを過小評価する要因だった。要するに、中二病的な「いいふりこき(ええかっこしい)」だ。

 余談だが、かつての伊集院光氏の造語としての「中二病」と、現在の若者言葉並びにネットスラングとしての「中二病/厨二病」とでは、無神論と新異教主義 ネオペイガニズム ほどの違いがあると、私は思う。同様に意味をねじ曲げられた造語として、コラムニストの深澤真紀氏の造語だった「草食男子」があるが、これは本来は男性の多様性を認めるための造語だったハズである。深澤氏といい、「プロ彼女」という造語の生みの親である能町みね子氏といい、自身の造語の意味がねじ曲げられているのに困惑したようだが、伊集院氏は「中二病」という造語の独り歩きに対してはどうでも良いらしい。 

 

 私は肌の手入れのために、あっちこっちに寄り道をした。私は仕事の関係で手肌が荒れる事が多かった。特に、ある清掃会社で働いていた頃は、手肌がひどく荒れて皮膚科に通っていたくらいだ。食品関係の工場で働いていた頃は、消毒液のせいか、まぶたが時々腫れていた。

 うーん、何か良いスキンケアのブツはないかな? 私のスキンケア迷走はしばらく続いた。

 馬油は高い。オリーブオイルを塗っても、隔靴掻痒 かっかそうよう 感がある。隔靴掻痒 もどかしい 。文字を見るだけでも、背中がかゆくなる。ワセリンだと、わざわざ東急ハンズに買い物に行くのが面倒だ。ロクシタンのシアバターは、顔に塗ってみると何だか宮沢賢治の『注文の多い料理店』を連想させる。何だか自分が食べ物になったかのような気分になる匂いだ。それに、安くない。 

 

 しかし、青い鳥はそこにいた。

 

 あるサイトに「ニベアクリームの原材料は、有名人御用達の某高級スキンクリームとほぼ共通している」という記事があった。私は久々にニベアの青缶を手に取った。 

 それ以来、私はニベアクリームを愛用している。子供の頃からの馴染みのクリームだ。青い鳥ならぬ青い缶はそこにあるのだ。

 しかし、使用済みの空き缶をどうしようか? 色々と細工して再利用しようか? 私はユーチューブで、ある人がニベアの青缶の塗装を剥がして磨く技術を紹介する動画を見つけた。なるほど、この下準備をすれば、その上にラインストーンなどを接着剤で貼り付けるのがやりやすくなるだろう。いつかは試したい方法である。

【ゴスペラーズ - 青い鳥】