当記事で紹介する本は、かつてアメブロやヤフーブログで私のブロ友さんだったお方の小説である。羽間黒男 さんというお方の小説『ロイヤル・プロディカル』(角川フォレスタ)なのだが、このペンネームはどうやら『ブラック・ジャック』の主人公の本名をもじったもののようだ。ブロガーさんとしては別のペンネーム(ハンドルネーム)を名乗っていた羽間さんは、健康上の都合によりアメブロやヤフーブログをやめたので、ネット上では消息不明なのだが(グーグルプラスに登録しているのを見つけたが何も投稿していなかった)、羽間さんとのネット上での交流は私にとっては良い思い出である(ケンカ別れではなかったのだから)。
さて、この『ロイヤル・プロディカル』は英国史ものの小説である。主人公は国王ヘンリー4世の王太子ハル(後のヘンリー5世)なのだが、これはシェイクスピア作品も下敷きにしている。シェイクスピアが創造したおちゃめな不良騎士フォールスタッフも出てくるのだが、彼の他に「準主役」として登場する武将「ホットスパー」ハリー・パーシーに注目してほしい。このヘンリー・ホットスパー・パーシーという人物は、項羽を理想化したような人物なのだ。愛馬が名馬である辺りはアレクサンダー大王を連想する人もいるだろうが、アレクサンダーもホットスパーも項羽的なイメージなのね。…んで、フォールスタッフのおっちゃんは劉邦だ(笑)。
私はアーサー王伝説をモチーフにした小説を書きたいので、英国史やフランス史などの勉強をしたいのだが、どうも私はヘンリー8世は好きになれない。何だか前漢の武帝みたいな身勝手野郎なので腹立つのだ。まあ、娘のエリザベス1世も父親とは別の方向性で英国版前漢の武帝なんだけどね。要するに典型的な専制君主か。
前述の通り、羽間さんは以前私のブロ友さんだったのだが、同時に(短い付き合いながらも)師匠と言っても良いお方でもあった。そして、王太子ハルにもまた「師」というべき人たちがいた。その一人に「ホットスパー」ハリー・パーシーがいたのだが、ハルはホットスパーを含めた師匠たちに対して「滅ぼす」という形で「恩を返す」事しか出来ない。
この小説は悲劇的エピソードとコミカルな場面のバランスの配分が絶妙なのだ。私はこの小説と作者さんに出会えて良かった(出会うと言ってもネット上のみでのやり取りだったけどね)。
【ラヴェル - 水の戯れ】