80年代の珍妙ガールズパワー ―猫十字社『県立御陀仏高校』―

 私は王道・主流派の少女漫画を敬遠している。それはだいたい、自分の好みに合う作品がなかなかないからである。特に、「恋愛」以外に大義名分がないような作品は、少女漫画だろうが、少年漫画だろうが青年漫画だろうが、興味ない。少なくとも、主人公は「恋愛」以外に何らかの大義名分があってほしいものである。その代わり、私は「脇役の恋愛」に萌える性癖がある。なぜなら、彼ら脇役たちも主人公と同じく物語上必要な存在であり、「生きた人間」であるのを示しているからである。

 そういえば、昔の少女漫画の名作は必ずしも恋愛がメインテーマだとは限らない。しかし、私は現在の少女漫画に対しては興味を持てない。青年漫画として発表された『ローゼンメイデン』や『宝石の国』などは、前世紀であれば少女漫画として発表されて売れたのかもしれない。要するに、現在の少女漫画界は、想像力/創造力の源泉を少年漫画界や青年漫画界に奪われた抜け殻に過ぎない。同じ事は、アニメ業界に力を奪われた実写業界にも言える。


 1980年代に発表された猫十字社氏の漫画『県立御陀仏高校』(最初の単行本は小学館、完全版は光文社)は、かなり不思議ちゃんなギャグ漫画である。主人公コンビは女子高生で、〈たっつぁん〉こと背古田竜実 せこた たつみ(なかなかの美少女)と〈ももちゃん〉こと腹田桃世 はらだ ももよ(言わずと知れた女優の原田知世氏の名前をもじった命名)の「背と腹コンビ」だが、彼女たちは『ファイブスター物語』『ウマ娘』の女性キャラクターたちにも負けず劣らず強烈な個性を放っている。

 他にも、イケメン忍者コンビや女子高生版ゴルゴ13、擬人化された動物たちや仏像モデルの教師たちなどが出てくるが、授業で戦車などの武器を使うというかなり物騒な内容である。これでも私立ではなく県立の高校である。一体どんな「修羅の国」の県なのだろうか(一応、本州らしい)? 学力以外でも、様々な意味での高偏差値が必要なのだろうな。とりあえず、ヤンキー漫画にありがちな不良高校ではないが、下手な不良高校以上に命に関わる事態になり得る校風である。

 ちなみに1巻では、幻の第一話が収録されていないが、なぜ収録しなかったのかは、明らかにされていない。作者は「表現者として認めがたい」とコメントを残したが、その「幻の第一話」が収録されていた『プチフラワー』1984年(昭和59年)10月号は国会図書館に収蔵されているのだろうか? 気になる。


 ストーリーは基本的に物騒な不条理ギャグだが(修学旅行で海外の紛争地帯に行ってしまうし)、そこは少女漫画らしく(偏見)恋愛沙汰もいくつか描かれる。最終巻ではたっつぁんの恋敵として悪役令嬢(当時はまだこの造語はなかった)が登場し、対決するのだが、何となく悪役令嬢は自滅し、たっつぁんが勝ってイケメン忍者と交際を始める。それゆえに、ももちゃんはたっつぁんと遊ぶ機会がなくなり、つまらなくなったが、最後はもう一人のイケメン忍者と付き合う可能性がほのめかされて終わる。

 多分、80年代という時代ゆえに、「女の友情」を描くのは現在以上に難しかったのだろう。当時は現在以上に、女性の存在価値は男性との関係性次第で決まっていたのだ(それゆえに、当時の私自身のような「男嫌い」の女は肩身が狭かったのだ)。しかし、私は思う。たっつぁんとももちゃんはそれぞれの彼氏との仲が進展しても、永く友情が続いただろう。仮に彼女たちが実在するなら、今もなお家族ぐるみの交流を続けているだろう。


 もしこれから『ウマ娘』にジャスタウェイが登場するならば、たっつぁんにジャスタウェイの、ももちゃんにゴールドシップのコスプレをさせた絵を描きたいと、私は思う。ただし、現在の私はピクシブなどの創作投稿サイトを退会しているので、仮にこの二次創作イラストを描いても、ライブドアブログのメインブログかアメブロのサブブログに投稿するだろう。他にはサブサイトにも掲載していきたい。もちろん、予定は未定だが。

【Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun】